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名古屋地方裁判所 昭和43年(行ウ)40号 判決 1976年10月27日

名古屋市中区富士見町一丁目六番地

原告

西岡勇

右訴訟代理人弁護士

笹岡龍太郎

名古屋市中区三の丸三丁目三番二号

被告

名古屋中税務署長

吉実重吉

右指定代理人

伊藤憲治

北嶋詔三

吉沢専一

鈴木孝

鈴木文雄

主文

被告が原告に対し、昭和四〇年六月二二日付でなした同三八年一月一日以降青色申告承認取消処分ならびに同四〇年七月九日付でなした同三八年分所得税の更正に伴う重加算税賦課決定をいずれも取消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はその五分の四を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、原告

1  被告が四〇年六月二二日付でなした原告に対する昭和三八年一月一日以降の青色申告承認取消処分を取消す。

2  被告が昭和四〇年七月九日付でなした原告に対する昭和三八年分所得税の更正処分、過少申告加算税ならびに重加算税の各賦課決定処分(いずれも昭和四二年六月八日付異議決定により一部取消された後の分)をいずれも取消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

(請求の原因)

一、原告は昭和三八年当時、名古屋市中区飴屋町に本事務所、同市西区六句町に西分室、同市熱田区明野町に中川分室をもうけ、弁護士ならびに税理士の業務に従事していた。

二、原告は昭和三八年分所得税につき別表(一)(課税処分表)の「確定申告額」欄記載のとおり被告に対し申告したところ、被告は(1)昭和四〇年六月二二日付で原告の昭和三八年分以降の青色申告承認取消処分をなし、(2)次いで同年七月九日付で原告の昭和三八年分所得税に関し右別表の「更正および賦課決定額」欄記載のとおり更正処分および過少申告加算税ならびに重加算税の各賦課決定処分をなした。

三、そこで原告は右(1)の処分につき昭和四〇年七月二〇日、(2)の処分につき同年八月九日被告に対しそれぞれ異議申立をしたが、被告は昭和四二年六月八日、前者につき棄却決定を、後者につき前記別表(一)の「異議決定額」欄記載のとおり一部取消の決定をそれぞれなした。

四、そこで、原告は昭和四二年七月六日名古屋国税局長に対し審査請求したところ、同局長は同四三年四月一九日付で右請求を棄却する旨の裁決をなした。

五、しかしながら、前記二(1)(2)の各処分(ただし(2)については昭和四二年六月八日付異議決定により一部取消された後の分。以下同じ)はいずれも違法であるからその取消を求める。

(請求原因に対する答弁)

一、請求原因一ないし四は認め、五は争う。

(被告の主張)

被告のなした前記各処分は以下述べるとおりいずれも適法である。

一、青色申告承認取消処分について

被告の調査によれば、係争年分につき原告の備付帳簿書類の一部には旧所得税法施行細則一〇条以下の規定に準拠せず、かつ当該帳簿書類には後記二2記載のとおり相当多額の売上計上洩れや過大又は架空の経費計上があり、取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載する等記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる不実の事実があると認められる。従つて本件の場合、改正後の所得税法一五〇条一項三号該当の事由があるので、被告のなした右処分は適法である。

二、更正処分について

1 本件更正処分の内訳は前記別表(一)の「異議決定額」欄一ないし六記載のとおりである。

2 事業所得金額について

(一) 右金額の計算明細は別表(二)(事業所得計算表)記載のとおりである。

(二) 売上金額 二六、八一一、四八二円

売上金額は原告計上の二六、三六八、四八二円の外に売上計上洩れ分合計四四三、〇〇〇円(その明細は別表(三)(売上洩れ額明細表)記載のとおり)があるので、原告計上額に右売上計上洩れ分を加算した二六、八一一、四八二円となる。

なお、原告のなした自白の撤回には異議がある。

(三) 必要経費 一九、八三二、八三九円

原告は必要経費として総額二三、九四六、一四六円を計上しているが、そのうち合計四、一一三、三〇七円については過大ないし架空計上と認められたので、原告計上分よりこの分を減算した。

各費目別(ただし原告の争うもの)の被告減算の内容根拠は以下のとおりである。

(1) 事務用品費 四二〇、六三一円

原告の計上額九二七、二九六円のうち五〇六、六六五円(中川分室分三一〇、〇五五円、西分室分一九六、六一〇円)を次の理由により減算した。

なお、減算額の内訳明細は別表(四)の一記載のとおりである。

(イ) 用紙代(減算額七三、六〇〇円)

領収証が一部についてあるのみで、右減算分については各分室において購入した物品に対する出金伝票により計上したものではなく、本事務所の指示によつて作成された伝票に基づくものであり、従つてその支払事実が確認できないので、この分を架空支出と認定して減算した。

なお原告主張の支払先は所在不明で支払事実の存在も疑わしい。

(ロ) タイプ印書代その他(減算額四三三、〇六五円)

領収証が皆無であり、支払先も不詳であるので右減算分を架空支出と認定した。

なお原告主張の税務署員接待のために支出したとの主張は否認する。

(2) 水道光熱費 三一七、五二一円

原告の計上分三五二、六三一円のうち、本事務所関係分の係争年におけるガス代につき、原告は業務用・家事用の総額一四五、八一二円から業務用の按分推計比率一〇〇分の七五を用いて一〇九、三五八円と算出している。しかしながら、これは当初から業務用と家事用のメーターが別であるから、右原告計上額のうちから事業用メーターによる分七四、二四八円を超える三五、一一〇円を減算した。

総額 按分推計比率 原告計上額

<省略>

事業用メーター分

109,358円-74,248円=35,110円

(3) 会費 九二、九五〇円

原告計上分一四〇、一五〇円(すべて本事務所分)のうち日ソ協会費六、〇〇〇円、社交ダンス会であるNDC会費二五、五〇〇円、囲碁同好会の土曜会費三、四〇〇円、支出の確認不能なその他一二、三〇〇円、以上合計四七、二〇〇円はいずれも事業と無関係なものとして減算した。

なお被告減算額の内訳明細は別表(四)の二記載のとおりである。

(4) 旅費 一、四二二、四八〇円

原告計上分一、七六〇、三三〇円のうち次のとおり合計三三七、八五〇円を減算した。なお被告減算額の内訳明細は別表(四)の三記載のとおりである。

(イ) タクシー代 一四四、五七〇円

(中川分室分九七、九六〇円、西分室分四六、六一〇円)

タクシー代は各分室において特定の者に対し毎月末頃支給したとされているが、帳簿上その記載が不十分なうえ右支払根拠を証する書類も殆どなく出張先、支払事実等が不明確である。従業員の出張については従業員等が自動車四台を所有しその維持費等は原告負担として右自動車を従業員の出張用に供しているのでタクシーを使用する必要性はないし、中川分室責任者水谷文吉の妻きみ子に対する支給分は裏付資料もなく多額であり、特に同分室では別途に近くのタクシー会社に対する支払がなされていることなどの事実から、右各支出は架空なものと認定して減算した。

(ロ) 宿泊費を伴つた旅費 一五二、四六〇円

(中川分室分八一、五七〇円、西分室分七〇、八九〇円)

従業員が東京・大阪に出張したとされているが、両分室とも東京・大阪に関与先はなく税理士業務につき出張すべきことも考えられない。仮に出張したとすれば、一四回も出張していながら全く領収証も出張事蹟の記録もないというのは極めて不自然である。従つて、右は架空支出として減算した。

(ハ) その他 四〇、八二〇円

(中川分室分四〇、〇一〇円、西分室分八一〇円)

交通費や駐車料金等の支出とされているもののうち、一部は領収証もなく支払先等の内容も不明で支払事実の確認できないものがあつたのでその分を架空支出として減算した。

(5) 接待交際費 六五七、九六一円

原告計上分一、六七三、五八五円のうち(イ)出金伝票上支払先不明の分と、(ロ)支払先が明らかなものでも支払先の調査により支払事実の確認できなかつた分、合計一、〇一五、六二四円(本事務所分九四、九八八円、中川分室分五二八、八二六円、西分室分三九一、八一〇円)を架空支出として減算した。その内訳明細は別表(四)の四記載のとおりである。

なお右(イ)については交際費水増しのため領収証などに基づかずに起票したものが相当含まれているので、領収証がなく支払の事実が確認できない支出は架空支出と認定した。原告の主張する領収証(甲第六号証の一ないし三)は「上様」とあるのみで減算分の領収証とみることは不自然であり、各分室の経費明細(甲第五号証の一)の記載とも矛盾する。

(6) 火災保険料(自動車保険を含む) 一〇八、四五一円

原告計上分二五八、四五一円のうち一五〇、〇〇〇円分(中川分室分五四、〇〇〇円、西分室分九六、〇〇〇円)を減算した。原告が従業員所有の自動車を借り上げて事業用に供していた分につき自動車保険に加入していないのに原告がその保険料を負担したように仮装して記帳していたことが判明したので、この分を自動車所有者の雇人費に振りかえたものである。

(7) 修繕費 四一三、五二四円

原告計上分五一六、四二四円のうち支払先、修理内容等について具体的記載がなく、領収証の保存もない等支払事実の確認できない分一〇二、九〇〇円(中川分室分四七、八〇〇円、西分室分五五、一〇〇円)を架空支出として減算した。その内訳は別表(四)の五記載のとおりである。

(8) 消耗品費 四五三、八〇六円

原告計上分六八二、二〇九円より購入物品、使用用途等の不明、支払先不明のものなど領収証がなく支払事実の明確でない分二二八、四〇三円(中川分室分一六六、一八三円、西分室分六二、二二〇円)を減算した。その内訳明細は別表(四)の六記載のとおりである。

(9) 福利厚生費 四四九、四六一円

原告計上分八四七、二〇六円より、次のとおり(イ)、(ロ)計三九七、七四五円を減額した。その内訳明細は別表(四)の七記載のとおりである。

(イ) 本事務所分 九四、八三五円

右のうち柴田酒店計四〇、二五五円、近藤クリーニング店計二、四〇〇円、その他一八〇円合計四二、八三五円の支払は家事費に該当するので否認し、フランス語先生謝礼金計五二、〇〇〇円も事業に直接関係ないので否認した。なおクリーニング代は家事費該当と考えられる部分のみ否認した。

(ロ) 分室分 三〇二、九一〇円

(中川分室分一七四、五七九円、西分室分一二八、三三一円)

右は従業員のレクリエーシヨン費や飲食代等として計上されたもののうち領収証もなくレクリエーシヨン実施の事実や飲食が必要であつたことを認めるに足りる具体的事実が認められなかつた分は必要経費と認められないので減算した。

(10) 新聞書籍費 三三五、四二三円

原告計上分三九七、九二三円のうち、その支払先・購入書籍の名称等が不明のものや領収証のない支出金額合計六二、五〇〇円を減算した。その内訳明細は別表(四)の九記載のとおりである。

(11) 通信費 五四八、〇三三円

原告計上分五六三、三一三円のうち領収証がなく支出の明確でない分一五、二八〇円(中川分室分)を減算した。その内訳明細は別表(四)の八記載のとおりである。

(12) 雑費 五九二、四〇六円

原告計上分一、〇〇八、八一六円より次の(イ)、(ロ)を減算した。その内訳明細は別表(四)の一〇記載のとおりである。

(イ) 本事務所関係分 二、六一五円

右は事業上必要とは認められない市民税延滞税などの分で、その額を減算した。

(ロ) 中川分室分 二八一、五四〇円

右の内訳は<1>分室従業員の東京・大阪出張の宿泊費六七、八四〇円、<2>アルバイト使用費一〇八、七〇〇円、<3>その他雑品等購入費一〇五、〇〇〇円であるが、これらはいずれも出金伝票はあるものの<1>については前記(4)(ロ)記載のとおりであり、<2>については受給者の氏名不明で、その事実が認められず、<3>は領収証がなく事業上必要な支出かどうかも不明なので、支払事実不明としてそれぞれ減算した。

(ハ) 西分室分 一三二、二五五円

原告計上分中、事業上直接関連のないゴルフ費用、小学校への寄附金、支出目的支払先不明の飲食代、事故内容等の不明な自動車事故による支出金、費目支払先等不明の支出金合計一三二、二五五円を減算した。

(13) 会議費 〇円

原告は会議費として五六四、九七〇円(本事務所分一九六、四〇〇円、中川分室分一八八、九〇〇円、西分室分一七九、六七〇円)を計上しており、「会議費又は会議会食」という支出費目で出金伝票が起票されているが、別表(四)の一一記載分について会議を行なつた事蹟が全くないこと、七四回にも及ぶ会食費の領収証が全くなく支払事実が確認できないこと、中川分室分について本事務所の指示だけで出金伝票が作成されたことがあること、午後五時以降の会議に超過勤務手当の計算がされていないことなどから右原告計上分を全額架空支出として減算した。

(14) 借入金利息 一二五、二九八円

原告計上分三三〇、四四八円のうち個人からの借入金分(合計二〇五、一五〇円)については、これを証する書類等がなく、原告の業態や資金繰りなどからみても借入を必要とする事情も認められないから、右の分に対する利息は架空支出として減算した。その内訳明細は別表(四)の一二記載のとおりである。

(15) 専従者給与(本事務所分) 二九五、〇〇〇円

原告計上分四七二、〇〇〇円中青色申告承認の取消にともない白色申告の専従者控除の控除限度額をこえる部分一七七、五〇〇円を減算した。

(四) 以上から正当と認められる前記別表(二)の「被告主張額」欄記載の金額の範囲内でなされた本件更正処分にかかる事業所得金額の認定には何ら違法はない。

3 雑所得金額について

定期積金に対する給付補てん金 七、八〇〇円

原告が名古屋相互銀行上前津支店において、定期積金契約に基づき昭和三七年五月より翌三八年四月まで合計四八、〇〇〇円の掛金をなし、翌三八年五月六日右満期清算の際に右掛金の外に同銀行より支払を受けたもので、これは旧所得税法(昭和二二年法律第七号)九条一項一〇号の雑所得に該当する。

三、過少申告加算税賦課決定処分について

前記のような本件過少申告には国税通則法六五条二項の「正当な理由」は存在しないから過少申告加算税が賦課されることとなるが、同法六五条一項によりその額を計算すると別表(六)記載のとおり六六、四〇〇円となるからその範囲内でなされた被告の処分には何ら違法はない。

四、重加算税賦課決定処分について

前記二2記載のように原告備付の帳簿書類には取引の全部又は一部を隠ぺい・仮装したものがあり、原告はこれにもとづき申告したがとくにそれが顕著なものだけでも別表(五)(仮装・隠ぺい額中特に顕著な額の明細)記載のとおり、一、三二〇、三〇〇円になり右金額をもつて国税通則法六八条一項にもとづき重加算税を計算すると別表(六)(各加算税額計算表)のとおり重加算税額は一八八、一〇〇円となるからその範囲内でなされた被告の処分に何ら違法はない。

五、以上被告のなした本件各処分はすべて適法である。

(被告の主張に対する原告の認否と反論)

一、被告の主張一は争う。

後記二2で詳述するとおり売上計上洩れはむしろ少額であり、この程度の付け落ち・付け損いは通常生ずるもので、これを所得の隠ぺいというのは誇大にすぎるし、経費についても過大又は架空とされている分は領収証がなく立証が困難なだけで現実に支出されているものである。

二、 被告の主張二について

1 同1のうち別表(一)の「一、総所得金額」欄の譲渡所得金額、「二、所得控除額」「五、税額控除額」欄の各金額は認め、その余は争う。

2(一) 同2(一)については別表(二)のうち、「一、総収入金額」欄の雑収入、「二、必要経費」欄の<1>公租公課、<6>広告宣伝費、<12>減価償却費、<13>法定福利費、<17>訴訟費用、<19>雇人費、<21>賃借料、<22>貸倒損失、<23>貸倒金、<24>雑損失の各金額は認め、その余は否認する。

(二) 同2(二)については別表(三)のN・Oを認める、同別表のAないしMは、はじめ被告の主張を認めたが、右は真実に反し錯誤にもとづくものであるから撤回し、A・B・C・Fについては不知、D・E・CないしMについては否認する。

(三) 同2(三)について

(1) 同(1)事務用品費についての被告の主張は争う。

(イ) 用紙代は各分室で購入した物品の費用であつて本事務所の指示で出金伝票を作成したものではない。また少くとも中川分室分については出金伝票にも分室経費帳(甲第五号証の一)にも支払先は西川商店・篠田商会等と明記してある。

(ロ) タイプ印書代・その他のうち、領収証がないこと、西分室分につき出金伝票・分室経費帳に支払先が明記されていないことは認め、その余は争う。

中川分室分の高橋タイプ等に対するタイプ印書代分(合計二五一、五八〇円)と「その他」のうち篠田商会分(合計一八、六〇〇円)の合計二七〇、一八〇円は、同分室責任者が税務署員接待のために支出した経費であるが、これをそのまま表示できないのでタイプ印書代等としたものである。

(2) 同(2)水道光熱費は、ガスのメーターが業務用と家事用で別であることは認めるが、その余は争う。業務用に使われる原告自身の事務室兼応接室および秘書室は家事用配管のガスを使用し、そのガス代は年間三五、一一〇円を下ることはない。

(3) 同(3)会費についての被告の主張は争う。

原告が従事する弁護士・税理士の業務においては顔を広くすることが必要で、そのため右費用の支出も業務に付随的に必要とする費用であつて宣伝・広告費の性質を兼ねるといえる。

(4) 同(4)旅費についての被告の主張は争う。

右のうち(イ)タクシー代については各分室主任の手帳(甲第三、四号証)にタクシー使用の明細が記載されているし、また従業員所有の車四台があつても故障修理・整備などのため使用できぬこともあるのでタクシー使用の必要性はある。さらに水谷きみ子は優秀な事務員であるが運転ができないため経理顧問先巡回に常時タクシーを利用していた。なお、分室近くのタクシーを利用するのは各分室からの出発の際のみで帰りは流しのタクシーを利用するしかなくその場合は領収証をとれない。

また(ロ)宿泊費を伴つた旅費については、両分室に東京・大阪に関与先がないことは認めるが、関与先の東京・大阪所在の取引先に対する税務資料等の誤謬調査のために相当事務員が出張し、また右事務員は常に同人らの親戚に宿泊したため領収証はないが旅費支出として原告が承認したものである。なお一万円未満のものは交通費ならびに諸雑費である。

なお(ハ)その他については、交通費、駐車料金に一部領収証のないものがあるのはむしろ当然である。流しのタクシーや街頭パーキングの場合には領収証を受領することはできない。

(5) 同(5)接待交際費については、水増しのため出金伝票を起票したとの被告主張事実は否認する。

領収証がないものはこれを受取らなかつたり、紛失したりしたのであり、各分室分について、各分室の責任者から事前に諒解を求めてきたものは領収証がなくともその支出を原告が承認したのである。被告が一、〇一五、六二四円を架空支出としたのは誤りである。被告が架空支出としたうち中川分室分には領収証(甲第六号証の一ないし三)のあるものがある。

(6) 同(7)修繕費についての被告の主張は争う。

領収証を紛失または不受領のため領収証がないだけで、実際各分室において修理をしていたものである。

(7) 同(8)消耗否費についての被告の主張は争う。

領収証については右(6)同様の理由で存在しないものもあるのでこれらの分まで含めて全部減算したのは不当である。

(8) 同(9)福利厚生費についての被告の主張は争う。

右のうち(イ)柴田酒店・近藤クリーニング等への支払は家事費に該当するものではない。即ち酒店支払分のうち原告が経費に計上した分は従業員慰安のためのビール代や事務上の来客接待のための洒肴代である。近藤クリーニングへの支払は本事務所の応接セツト・椅子・自動車座席のカバー・シートの洗濯に用したもので事業用の支出である。

またフランス語先生謝礼金も原告の弁護士業務上フランス法を研究する必要があるので事業用の経費である。

(ロ)についてはレクリエーシヨン費用とは分室従業員がグループ毎に特別親睦のための催しや旅行のために支出したものである。飲食代とは従業員消費のコーヒー代、菓子代で原告が許容していたものであり、これらにつき一々領収証をとることはできない。

(9) 同(10)新聞書籍費についての被告の主張は争う。

領収証については受取れないものや、紛失したものがあるが、いずれの支出も事業上必要があるものである。

(10) 同(11)通信費についての被告の主張は争う。

領収証は受取らなかつたり紛失したものもあるから領収証のないものをすべて減算するのは不当である。

(11) 同(12)雑費についての被告の主張のうち(イ)は認め、(ロ)(ハ)は争う。

(ロ)については、そのうち<1>宿泊費は前記(4)(ロ)のとおりであり、<2>アルバイト使用費は分室の伝票に氏名の記載のないものがあるが実際にアルバイトを使用していたものである。

また(ハ)についてはゴルフ費用は業務の性質上顔を広くしておく必要があるので、その支出も事業に関連がないとはいえず、小学校への寄附金なども宣伝の意味を持ち事業に関連性がある。事故内容不明の支出金も実際に自動車事故がありそのため修理費がかかつたものである。

(12) 同(13)会議費についての被告の主張は争う。

会議は本事務所と各分室間の打合せのため一〇日に一回程度の割合で開いていたし、領収証がないのは受取らなかつたり紛失したためである。また超過勤務手当の点は当時の勤務条件から法定の要件がなかつたので支払わなかつたものである。

(13) 同(14)借入金利息については被告主張のうち高木鈴子に対する九六、一三七円は争い、その余は額が少ないのでしいて争わない。

(14) 同(15)専従者給与についての被告の主張は争う。

前記のとおり青色申告承認取消処分が違法であるから、それにともなう右減算は不当である。

(15) なお、領収証のないものをことごとく否認するのは社会常識に反し税法の解釈適用を誤つている。現に税務署幹部も領収証がなくとも常識上経費として必要と考えられるものは経費に計上すべきであると言明している。

(四) 被告の主張二2(四)については争う。

3 同3は争う。

三、同三は争う。

四、被告の主張四は争う。

重加算税の賦課は例外的なものでその適用は慎重になされなければならない。

被告のいう売上計上洩れについては原告に一部手落ちはあつても仮装隠ぺいという程のものではなく、また経費の支出については領収証がないなどの理由に帰するもので前記のとおり原告は現実に支出しているものであつて仮装隠ぺいしたものではない。

従つて、本件の場合重加算税賦課の要件はないので本件賦課決定処分は違法である。

第三、証拠

一、原告

甲第一ないし四号証、第五号証の一、二、第六号証の一ないし三、第七号証の一、二を提出し、証人高木鈴子、同服部徳治郎、同西川一三、同加藤清治の各証言、原告本人尋問の結果を援用し、乙号各証の成立(乙第一三ないし一五号証は各原本の存在と成立)を認めると述べた。

二、被告

乙第一ないし一七号証を提出し、証人平川正雄の証言を援用し、甲第一、二号証、第五号証の一、二の成立は認め、その余の甲号各証の成立は不知と述べた。

理由

一、請求原因一ないし四の各事実は当事者間に争がない。

二、そこで被告のなした本件各処分のうち、先ず本件更正処分(ただし昭和四二年六月八日付異議決定により一部取消された後の分。以下同じ)の適否について判断する。

1  原告は、本件更正処分につき、その認定総所得金額のうち事業所得金額と雑所得金額を争うので、以下検討する。

2  事業所得金額について

(一)  被告主張にかかる売上計上洩れ分のうち別表(三)のN・Oについては当事者間に争いがない。

同別表のAないしMについて、原告は初め被告の主張事実を認めたがその後右自白を撤回し、被告はこれに異議を述べている。しかし、本件全証拠によるも右自白が真実に反することを認めさせるにたりる証拠はない。従つて右自白の撤回は許されない。

結局売上計上洩れ額は被告主張どおり四四三、〇〇〇円となるから、これに当事者間に争いない原告計上の二六、三六八、四八二円を加えた合計二六、八一一、四八二円が係争年分の原告の売上金額である。

よつて総収入金額は、右売上金額と当事者間に争いない雑収入一〇一、一四六円とを合計した二六、九一二、六二八円となる。

(二)  必要経費

必要経費については、別表(二)の<1>、<6>、<12>、<13>、<17>、<19>、<21>ないし<24>(合計金額一三、五九九、八九四円)について当事者間に争いがなく、その余については原被告間主張を異にするので以下検討する。

(1) 事務用品費 六五七、一一六円

被告減算分五〇六、六六五円のうち、(イ)用紙代については証人加藤清治の証言により真正に成立したものと認める甲第三号証、証人服部徳治郎の証言により真正に成立したものと認める甲第四号証、証人西川一三の証言により真正に成立したものと認める甲第七号証の一、二、成立に争いのない甲第五号証の一、二、証人西川一三の証言、原告本人尋問の結果によれば、各分室とも原告主張どおり合計七三、六〇〇円が用紙代として支出されていることが認められ、他に右認定を覆すにたりる証拠はない。

また(ロ)タイプ印書代・その他のうち、原告が税務署員接待のために支出したと主張する合計二七〇、一八〇円分は仮に支払事実が存するとしても違法な支出であつて到底必要経費として認めることはできない。その余の分一六二、八八五円については前掲甲第三、四号証、第五号証の一、二、原告本人尋問の結果によりその支出の事実が認められいずれも成立に争いのない乙第七、一三号証によるも右認定を左右せず他に右認定を覆すにたりる証拠はない。

従つて、事務用品費は原告計上の九二七、二九六円より右二七〇、一八〇円を控除した六五七、一一六円となる。

(2) 水道光熱費 三五二、六三一円

被告は原告計上分より本事務所関係分ガス代のうち三五、一一〇円を減算している。

ところで、右事務所のガスメーターは業務用と家事用に分けられていることは当事者間に争いがない。また原告本人尋問の結果によれば、原告が業務のために使用する原告自身の事務室兼応接室等は家事用配管によるガスを使用しその使用量は右メーター分の約六割であることが認められる。一方同事務所の係争年におけるガス代の総額が一四五、八一二円、業務用メーター分が七四、二四八円であり、従つて家事用メーター分が七一、五六四円であることは格別当事者間に争いがないから、家事用メーターによる右事務室等の使用料は四二、九三八円(七一、五六四円×〇・六)となり、被告の減額は失当である。

従つて、水道光熱費は原告計上額三五二、六三一円と認めるのが相当である。

(3) 会費 九二、九五〇円

被告減額分四七、二〇〇円の内訳が別表(四)の二記載のとおりであることは原告も格別争わない。そして、日ソ協会費、社交ダンス会費、囲碁同好会費などの費用は、原告の個人的趣味などのためのものであつて、原告の事業収入を得るために必要な経費とはいえないから、被告がこの分を減額したのは適法である。

結局、会費は原告計上分一四〇、一五〇円より右四七、二〇〇円を控除した九二、九五〇円となる。

(4) 旅費 一、七六〇、三三〇円

被告減額分のうち(イ)タクシー代については、前掲甲第三、四号証、第五号証の一、二、乙第七号証、証人加藤清治、同服部徳治郎の各証言、原告本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨によれば、被告が減額した分のタクシー代は各分室事務員らの原告の税理士業務補佐のため中川分室分につき分室責任者水谷文吉、事務員水谷きみ子、同加藤清治、西分室分につき分室責任者服部徳治郎、事務員小野茂に毎月(主として月末に)一回宛各支払われていること、服部に支払われた分は西分室の他の従業員のタクシー代を含んでいること、右五名のうち水谷きみ子を除く者は自動車を有しているが、時には整備などの理由で自己の車が使えずタクシーを利用したこともあること、また中川分室では近隣のタクシー会社への支払もあるが、これは同分室から出張先への往路用のタクシー代であつてその帰路用には流しのタクシーが利用されていたことが認められ、乙第一七号証の記載によるも右認定を左右するにたりず、他に右認定を妨げるにたりる証拠もない。

また(ロ)宿泊費を伴う旅費については、前掲各証拠によれば、原告の税理士業務のため各分室担当事務員が東京・大阪へ誤謬調査などの目的で出張したことが認められ、右認定に反する乙第一七号証の記載は右各証拠に照して措信できず他に右認定を妨げるにたりる証拠はない。

そして(ハ)その他についても前掲各証拠によればその支出の事実が認められ乙第一七号証の記載は前同様信用できず、他に右認定を左右するにたりる証拠はない。

以上被告が減額した(イ)ないし(ハ)につき何れもその支出の事実は認められ、右各支出は何れも原告の税理士業務による収入を得るために必要な経費といえるから、被告がこれを減額したのは失当である。

結局、旅費は原告計上の一、七六〇、三三〇円と認めるのが相当である。

(5) 接待交際費 六五七、九六一円

前掲甲第一ないし四号証、第五号証の一、二、第六号証の一、二、原告本人尋問の結果によれば、被告減算額分一、〇一五、六二四円は本事務所各分室分を通じ支出されている事実を認めることができ、右認定に反する乙第八、一七号証の記載は右各証拠に対比して信用できず他に右認定を覆すにたりる証拠もない。

しかしながら、右各支出は原告の帳簿・記録上(甲第一ないし四号証、第五号証の一、二)単に飲食をした店舗の名前、接待をした者の氏名或いは飲食した品名だけの摘示に止まるものが多く、これらの分については果して当該支出が原告の事業遂行上必要であつたか否か疑問であつて必要経費と認めることはできず、また比較的接待交際費の趣旨を摘示している本事務所分も、その内容はダンスの会合などであつてこれ又原告の事業収入を得る上で必要な経費であつたということはできない。

従つて接待交際費は原告計上分一、六七三、五八五円より右一、〇一五、六二四円を控除した六五七、九六一円となる。

(6) 火災保険料 一〇八、四五一円

被告減算分一五〇、〇〇〇円は、原告が借り上げて業務用に供していた従業員所有自動車の保険料であることは原告も格別これを争わないので、右を所有者らの雇人費に振りかえることは相当であり、従つて、火災保険料は原告計上分二五八、四五一円より右一五〇、〇〇〇円を控除した一〇八、四五一円となる。

(7) 修繕費 五一六、四二四円

前掲甲第三、四号証、第五号証の一、二、証人服部徳治郎の証言、原告本人尋問の結果によれば、被告減額分については各分室分ともすべて自動車・電機製品などの現実に修理が行なわれそのために支出されたものと認めることができ、他に右認定を妨げるにたりる適切な証拠はない。

従つて、修繕費は原告計上分の五一六、四二四円と認めるのが相当である。

(8) 消耗品費 六八二、二〇九円

前掲甲第三、四号証、第五号証の一、二、原告本人尋問の結果によれば、被告減額分について各分室分ともガソリン代、石油代、机など備品代として現実に支出されていることが認められ、他に右認定を妨げるにたりる適切な証拠はない。

従つて消耗品費は原告計上分の六八二、二〇九円と認めるのが相当である。

(9) 福利厚生費 七五二、三七一円

被告減額分のうち(イ)本事務所分九四、八三五円については、そのうち柴田酒店、近藤クリーニング等の分合計四二、八三五円は原告本人尋問によるもこれを原告の事業収入を得るために必要な支出と認めることはできず、その性質上家事関連費と考えるのが相当であり、またフランス語先生謝礼分五二、〇〇〇円は、原告本人尋問によるも原告が事業収入を得るためにとくにフランス語を修得しなければならないとする事由は認められず、従つてこれを必要経費とするのは相当でない。

また(ロ)分室分については前掲甲第三、四号証、第五号証の一、二、原告本人尋問の結果によれば、各分室においてレクリエーシヨンが実施されその補助として原告より支出されていること、各飲食代等についても従業員に対する残業用夜食代、事務服等のため現実に支出されていることが認められ、他に右認定を妨げるにたりる証拠はない。そして、原告計上のうち右各分室分の福利厚生費は可成り多額(甲第五号証の一、二によれば総額四三四、三二五円であると認められる)ではあるが、各分室の当時の従業員数(原告本人尋問の結果によれば両分室で計二二名いたことが認められる)、各分室の事務量、毎回の支出額などの点を勘案すれば、右金額があながち多大に過ぎるともいえないのでこれをすべて必要経費として認めるのが相当である。

結局福利厚生費は原告計上分八四七、二〇六円より右(イ)の九四、八三五円を控除した七五二、三七一円となる。

(10) 新聞書籍費 三九七、九二三円

前掲甲第三、四号証、第五号証の一、二、原告本人尋問の結果によれば、各分室分とも税務関係の書籍および新聞を現実に購入していたことが認められ、他に右認定を左右するにたりる適切な証拠はない。

従つて新聞書籍費は原告計上の三九七、九二三円と認めるのが相当である。

(11) 通信費 五六三、三一三円

甲第三号証、第五号証の一に弁論の全趣旨によれば、中川分室において被告減額分につき切手代、葉書代、書留料金などとして現実に支払がなされていることが認められ、他に右認定を妨げる証拠はない。

よつて、通信費は原告計上どおり五六三、三一三円と認めるのが相当である。

(12) 雑費 七九五、一四六円

被告減額分のうち(イ)本事務所関係分二、六一五円について、これを減額することは原告も格別争わない。

次に(ロ)中川分室分二八一、五四〇円のうち<1>宿泊費六七、八四〇円は前記(四)(ロ)記載と同様の理由でこれを必要経費と認めることができ、また<3>その他一〇五、〇〇〇円は前掲甲第四号証、第五号証の一によれば、原告の帳簿記録(右甲各号証)上ではその内訳がパーキング代などとある程度具体的に記されていることが認められるので右は必要経費にあたるものといえる。しかしながら<2>アルバイト使用費一〇八、七〇〇円はその計上高が多額であるにも拘らず右甲第五号証の一、原告本人尋問の結果によるもアルバイトとして使用した者の氏名、その使用期間等が不詳であつて、その支払事実が認められず他にこれを認めさせるにたりる適切な証拠もないのでこれを必要経費とすることはできない。

更に(ハ)西分室分は別表(四)の一〇のうち、<1>「一二・一〇宿泊費」の九、二〇〇円と「その他」欄の「一二・一〇」の二、一一〇円合計一一、三一〇円は前掲甲第四号証、第五号証の二、証人服部徳治郎の証言によれば前記(4)(ロ)と同じく業務出張のための宿泊費、雑費であることが認められる。また<2>同別表の「その他」欄中「三・三〇」の二、〇〇〇円、「七・三一」の一、〇〇〇円、「九・三〇」の二、五〇〇円、「一二・七」の八、五〇〇円、「一二・一〇」の四、六〇〇円合計一八、六〇〇円は前掲甲第五号証の二、原告本人尋問の結果によればいずれも石ケン・チリ紙代等の雑費として支出されたことが認められるのでこれを必要経費として認めるのが相当である。

しかしながら、<3>同別表の「その他」欄中右<1>・<2>該当分を除いたその余の分合計四五、〇〇〇円は前掲甲第五号証の二によればいずれもアルバイト使用費用であるが前記(ハ)と同様支払事実が認められず、<4>同別表中右<1>ないし<3>を除くその余の分合計五七、三五五円は前掲甲第四号証、第五号証の二によれば同表記載のとおりゴルフ費用、小学校寄附金、事故費用等として支出されていることを認めることができるが、右はいずれも原告が事業収入を得るために必要な経費とは考えられないものである。

従つて雑費は原告計上分一、〇〇八、八一六円より右(イ)二、六一五円、(ロ)(3)一〇八、七〇〇円、(ハ)<3><4>一〇二、三四五円合計二一三、六八〇円を控除した七九五、一五六円となる。

(13) 会議費 一六九、四九一円

前掲甲第一ないし第四号証、第五号証の一、二、証人服部徳治郎、同加藤清治の各証言、原告本人尋問の結果によれば、別表(四)の一一記載の各日時に本事務所、各分室とも事務連絡打合せ等のため会議を行なつたこと、各分室においては概ね三、四名の者がこれに参加したこと、その会議終了後会食をして右別表記載の各金額を支出していることが認められ、右認定に反する乙第八、一七号証の記載は前掲各証拠に照らして信用できず、乙第一五号証、証人平川正雄の証言によるも右認定を左右するにたりず他に右認定を覆すにたりる証拠はない。

しかしながら、右別表の記載からも明らかなとおり、本事務所分は月平均一回、一回あたりの会食費用は概ね一五、〇〇〇円から二〇、〇〇〇円、各分室分は平均して大体一〇日間に一回で、一回あたりの会食費は概ね五、〇〇〇円位であること、その金額からいつて単なる夕食程度の会食でないことを併せ考えると、聊さか多額に過ぎるものといわざるを得ず、原告の事業収入を得るために必要な限度を超えているものと認められる。

そこで会議の回数、参加人員、一回当りの会食費用などを総合考慮して原告計上分五六四、九七〇円のうち、右限度を超える分を全体として七割と認め、その分三九五、四七九円を控除するのが相当である。

結局会議費は一六九、四九一円となる。

(14) 借入金利息 二二一、四三五円

被告減額中高木鈴子に対する分九六、一三七円を除くその余の一〇九、〇一三円については、これを減額することは原告も争わず、前掲甲第一、二号証、証人高木鈴子、原告本人尋問の結果を総合すれば、原告は係争年ころ高木鈴子より書籍(洋書)代に充てるため約三〇万円を借入れその後利息として原告計上額を同人に支払つていることが認められ、他に右認定を左右するにたりる適切な証拠はない。

結局借入金利息は原告計上分三三〇、四四八円より右争いのない一〇九、〇一三円を控除した二二一、四三五円となる。

(15) 専従者給与 四七二、五〇〇円

被告のなした青色申告承認取消処分に伴ない被告が原告計上分のうち白色申告者の専従者控除の控除限度額をこえる部分一七七、五〇〇円を減算したのは、後に認定するとおり右取消処分は不適法であるから違法である。

よつて、専従者控除は原告計上のとおり四七二、五〇〇円となる。

以上のとおりであるから、必要経費は前記当事者間に争いのないもの合計一三、五九九、八九四円に、右(1)ないし(15)の合計八、二〇〇、二六一円を加えた二一、八〇〇、一五五円となる。

(三)  従つて、原告の係争年分の事業所得金額は、(一)総収入金額二六、九一二、六二八円より(二)必要経費二一、八〇〇、一五五円を差引いた五、一一二、四七三円となる。

3  雑所得金額について

成立に争いのない乙第一六号証によれば、被告主張どおり原告は定期積金に対する給付補てん金七、八〇〇円の支払を受けたことが認められる。しかして、右給付補てん金は旧所得税法九条一項一〇号所定の雑所得に該当すること明らかである。

4  以上により、原告の総所得金額は、前記認定の事業所得金額五、一一二、四七三円、雑所得金額七、八〇〇円と当事者間に争のない譲渡所得金額損失一五四、八八二円を合計した四、九六五、三九一円であるから、当事者間争いない所得控除額二六〇、〇〇〇円を控除した四、七〇五、三九一円が課税総所得金額である。

従つて、原告の昭和三八年分課税総所得金額について被告のなした本件更正にかかる認定額四、七〇五、〇〇〇円(異議決定による一部取消後の分)は右金額の範囲内であることは明らかであるから、本件更正処分は適法であり、被告のなした過少申告加算税賦課処分も適法である。

三、青色申告承認取消と重加算税賦課について

被告は、青色申告承認取消に関し、原告の係争年分所得の計算につき備付けるべき帳簿書類等について旧所得税法施行細則に準拠しないと主張するが、具体的な主張を欠くのみならず、被告全証拠によるも右主張を認めさせるにたりない。またその帳簿書類等に旧所得税法一五〇条一項三号にいう取引の全部又は一部を隠ぺいし若しくは仮装して記載する等当該帳簿書類の記載事項の全体について、その真実性を疑うにたりる不実の事実があると主張する。なるほど原告の提出にかかる係争年分青色申告決算書によれば、別表(三)記載のとおり売上につき計上洩れ、過少計上による総計四四三、〇〇〇円があることは原告も争わず、また必要経費について総計二、一四五、九九一円の過大計上があることは先に認定したところで明らかであるが、これらの事実があるからといつて直ちに事実を隠ぺいし又は仮装したということはできず、却つて右計上洩れ等にかかる四四三、〇〇〇円は当事者間争いない原告の総収入金額二六、八一一、四八二円の一・六五パーセントに過ぎず、また右過大計上にかかる必要経費二、一四五、九九一円は先に認定にかかる必要経費総計二一、八〇〇、一五五円の九・八四パーセントに当る程度であつて、先に必要経費に関し認定した経緯や原告本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨から併せ考えると、右各記載は単に記帳上の間違い、個々の必要経費についての見解の相違、支払事実の立証の不能(領収証等の不存在)等によるものでないかと考えられるのであつて、原告が殊更故意又は作為により事実を隠ぺい又は仮装したことによるものと考えることはできない。

被告は片山庸一に対する売上分四二〇、〇〇〇円について、これを二〇〇、〇〇〇円とする過少計上は隠ぺいの著しいものというけれども、同人に対し原告は四二〇、〇〇〇円の領収証(乙第一一号証の一)を手交していることから考えても、故意による隠ぺいとはいえない。また弁護士、税理士たる原告は納税者を指導する立場にあることは被告の主張するとおりであるとしても、ただそれだけの理由で前記不実の事実を把えて故意または作為によるものと断ずるわけにゆかない。その他原告が故意に隠ぺい又は仮装したとの事実を認めさせるにたりる適切な証拠のない本件においては、被告のなした青色申告承認取消処分は何等正当の事由に基づきなされたものといえないので違法である。

而して被告は前記主張にかかる事実の隠ぺい又は仮装ありとして重加算税賦課決定をなしたのであるが、右認定事実によれば、原告において事実を故意に隠ぺい又は仮装した事実を認めることができないので、右賦課処分も正当の事由に基づかないでなされた違法な処分であるということができる。

四、よつて、原告の本訴請求中、被告のなした本件青色申告承認取消処分ならびに重加算税賦課決定の各取消を求める部分は理由があるので正当として認容すべきであるが、その余の部分は失当として棄却すべきである。そこで訴訟費用の負担について民事訴訟法九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山田義光 裁判官 窪田季夫 裁判官 小熊桂)

別表(一)

課税処分表

<省略>

<省略>

(注) 審査裁決額については棄却のため省略した。

別表(二)

事業所得計算表

<省略>

<省略>

<省略>

注(1)―原告計上の火災保険料のうち一五〇、〇〇〇円を給与と認定し雇人費に振替える。

注(2)―貸倒損失一二一、四〇〇円は貸倒金に振替える。

別表(三)

売上計上洩れ額明細表

<省略>

<省略>

別表(四)の一

「事務用品費減算分内訳」

<省略>

<省略>

別表(四)の二

「会費減算分内訳」

<省略>

別表(四)の三

「旅費減算分内訳」

(イ) 中川分室関係分

<省略>

<省略>

(ロ) 西分室関係分

<省略>

<省略>

別表(四)の四

「接待交際費内訳」

(一) 本事務所関係分

<省略>

(注) 日付は起票の日であり、かつこ書の日付は実際に支払つたとする日である。

(二) 中川分室関係分

<省略>

<省略>

(三) 西分室関係分

<省略>

別表(四)の五

「修繕費減算分内訳」

(イ) 中川分室関係分

<省略>

(ロ) 西分室関係分

<省略>

別表(四)の六

「消耗品費減算分内訳」

<省略>

<省略>

別表(四)の七

「福利厚生費減算分内訳」

(イ) 本事務所関係分

<省略>

<省略>

(ロ) 中川分室関係分

<省略>

<省略>

(ハ) 西分室関係分

<省略>

別表(四)の八

「通信費減算分内訳」

<省略>

別表(四)の九

「新聞書籍費減算分内訳」

(イ) 中川分室関係分

<省略>

(ロ) 西分室関係分

<省略>

別表(四)の一〇

「雑費減算分内訳」

(イ) 本事務所関係分

<省略>

(ロ) 中川分室関係分

<省略>

<省略>

(ハ) 西分室関係分

<省略>

別表(四)の一一

「会議費内訳表」

<省略>

<省略>

別表(四)の一二

「借入金利息減算分内訳」

<省略>

別表(五)

仮装隠ぺい額中特に顕著な額の明細(被告主張分)

<省略>

<省略>

別表(六)

各加算税額計算表

<省略>

<省略>

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